HOME▶コラム▶連邦結成を振り返って考える カナダ政治のダイナミズム(寄稿:高野麻衣子、関東地区ニューズレターNo.15〔2017年9月〕より転載)

連邦結成を振り返って考える カナダ政治のダイナミズム(寄稿:高野麻衣子、関東地区ニューズレターNo.15〔2017年9月〕より転載)

連邦結成を振り返って考える

カナダ政治のダイナミズム

 

高野 麻衣子

より良い民主主義のあり方を求めて、世界の36カ国を比較分析した政治学者アレンド・レイプハルトの古典的研究によれば、民主主義には大きく分けて二つの形態がある。一つは多数決型の民主主義であり、もう一つは多極共存型の民主主義である。その分類基準は、権限集中の度合いが高く、また、国内の相対多数派の利益が優先されやすい仕組みが採られているか、あるいは、権限が分散されており、国内利益の規模を最大化する仕組みが採られているかという点にある。多数決型民主主義の典型は、中央集権制のもと、例えば、選挙制度として小選挙区・勝者総取り制を採るイギリスである。他方、連邦制のもと、選挙制度では比例代表制を採用しているスイスやベルギーは多極共存型の民主主義に分類される。

カナダでは、連邦結成期にジョン・A・マクドナルドを中心にイギリス型の中央集権制(legislative union)の適用が唱えられたものの、民族的・地域的な多様性を踏まえた妥協として連邦制(federal union)が採用された。しかしながら、議会制度や選挙制度ではイギリスの伝統が受け継がれたこともあり、それらは多数決型民主主義の特徴を帯びている。レイプハルトの理論では、多元化した社会では多極共存型の民主主義の方が政治は安定すると結論付けられている。この考え方に基づくならば、民族的にも地域的にも高度に多元化しているカナダでは、多極共存型の民主主義の方が親和的である。つまり、カナダ社会の実態とは必ずしも適合的ではない政治制度が採用されているということになる。

 しかし、連邦結成期の議論を振り返るならば、今日のカナダ政治にも受け継がれている、国内利益の多様性に配慮した政治のあり方が模索されていたことがわかる。例えば、当事の政治家クリストファー・ダンキンが主張し、マクドナルドも同様の認識をとっていた、内閣における州(や民族)の均衡人事である。そこでは、大臣としての資質よりも、州や民族の代表確保が優先されることもあり、これはイギリス由来のウエストミンスター・モデルを採る他の民主主義国家や連邦制を採る他の国々で見られるものではなくカナダ独自である。したがって、カナダでは制度的には多数決型の民主主義が採られているとはいえ、その枠内で、社会の多様な利益に配慮する仕組みが自律的に生み出されてきたといえそうである。

 多数決型の民主主義に特徴付けられる政治制度上の見かけの作用のみではとらえきれない、カナダ政治の実際のダイナミズムについて、連邦結成期に政治家たちが模索した国家統合と政治運営のあり方をめぐる議論に遡りながら、今後検討を深めていきたいと考えている。

(共立女子大学)

(関東地区ニューズレターNo. 15〔2017年9月〕より転載)

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