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カナダ人ミュージシャンの台頭(寄稿:田中俊弘、関東地区ニューズレターNo.15〔2017年9月〕より転載)

カナダ人ミュージシャンの台頭

 

田中 俊弘

 『ミュージック・マガジン』2017年5月号に、「トロント・インディの深い森」と題する特集記事が掲載された。著者の新田晋平氏によれば、いまやトロントは、ブラックミュージックの注目都市であるばかりか、フォークやジャズを中心とするインディシーンでも独自性を放っているのだ。

 実は、インディに限らずメジャーレーベルの世界でも、いま、カナダ人ミュージシャンが大いに注目されている。たとえば今年5月のアメリカ合衆国ビルボード・ミュージック・アウォーズ(Billboard Music Awards)で、歴代最多となる13部門で受賞したドレイク(Drake)は、トロント出身のラッパーである。しかも、トップアーティストに最終ノミネートされた10組のうち、カナダ出身者は、ドレイクに加えてジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、ショーン・メンデス(Shawn Mendes)、そしてザ・ウィークエンド(The Weeknd)の計4組が占めた(トップ男性アーティスト部門では、5組中4組がこの同じカナダ人アーティストたちで、受賞者はドレイクだった)。ちなみにザ・ウィークエンドは、前年のビルボードにおける最多受賞者である。映画『モアナと伝説の海』のエンディングソングを歌って注目されているアレッシア・カーラ(Alessia Cara)も、受賞こそ逃したが、トップニューアーティストにノミネートされた。

 今年の授賞式では、セリーヌ・ディオン(Céline Dion)が、“My Heart Will Go On”の発表20周年を記念して同曲を歌い、会場を大いに沸かせた。長らくカナダのポップミュージック・シーンにおけるアイコンだった彼女と、台頭する多くの若いカナダ人アーティストたちが集う会場は、まるでカナダで主催された音楽賞のようだと言えば言い過ぎだろうか。

 ここ数年、日本でも名前が知られているカナダ出身のミュージシャンが増えて、そのジャンルも多様化している。バラエティ豊かな音楽に、「カナダ性」を見出すのは難しいが、彼らは、世界ポップカルチャー市場の最強言語である英語を武器に、また、アメリカ合衆国の隣国という地理的優位性も活用しながら、確実にその地歩を固めているのだ。

 次にブレイクするのは誰だろうか。予測は難しいが、「カナダのグラミー」と称されることもあるジュノー・アウォーズ(JUNO Awards)の動向が参考になる。昨年亡くなったレナード・コーエン(Leonard Cohen)を追悼する場となった2017年のジュノー賞で、年間大躍進アーティスト(Breakthrough Artist of the Year)に選ばれたエドモントン出身のR&BシンガーであるルースB(Ruth B)に、個人的に注目している。

(麗澤大学)

(関東地区ニューズレターNo.15〔2017年9月〕より転載)

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