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J. K. Chambers教授と社会言語学(関東地区ニューズレターNo.9)

J. K. Chambers教授と社会言語学

時田 朋子

来る日本カナダ学会第38回研究大会では、トロント大学言語学部教授のJ.K. Chambers教授による基調講演 “Canadian English and Canadian Identity”が予定されている。カナダ英語と言語変種を専門とするChambers教授は、社会言語学の重鎮として知られる。Chambers教授およびカナダ英語に関する教授の研究については大会プログラムで紹介されているので、ここでは、Chambers教授がいかに社会言語学の発展に関わってきたかを述べたい。

言語と社会の関係性を研究する社会言語学は、1960年代後半に研究分野として確立され発展してきた。社会言語学は、言語使用者の生態を描く点において人類学、理論や研究方法において社会学、基礎的な知識において言語学を取り入れている。このバランスはテーマによって異なり、その結果、今日の社会言語学には言語変種はもちろんのこと、語用論、ピジンとクレオール、言語とジェンダー、言語政策、バイリンガリズムなど幅広いテーマがある。ところで、社会言語学がその特徴の多くを引き継いだのは、言語地理学であった。言語地理学は、音韻、アクセント、呼び名などの言語変種の地理的分布パターンを研究する。そのため、かつては伝統的な言語変種を強く話す人をインフォーマントとすることが多かった。しかし、1960年代になり「誰がどのように話すか」という観点から、町などの特定地域で話される言語変種を、アメリカのLabovやイギリスのTrudgillとともにChambers教授が研究するようになった。そのため、年齢や性別、社会的地位などの多様性をインフォーマントに求めた。そして、そのような個人的特性に加え、使用場面や語機能などの要因から、イントネーションや語彙や文法構造などの言語変種の特性を分析するアプローチを採ったのである。その後、この研究方法は発展し、社会言語学の発展につながった。

 今回のChambers教授の基調講演は、カナダ英語について知る貴重な機会である。今から拝聴が楽しみである。(東洋大学)(関東地区ニューズレターNo.9, Oct. 2013より転載)

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