HOME▶コラム▶カナダ最高裁判事任命の取消(関東地区ニューズレターNo.11)

カナダ最高裁判事任命の取消(関東地区ニューズレターNo.11)

カナダ最高裁判事任命の取消

 

富井 幸雄

 

 昨年度サバティカルでアメリカはVirginia大学に遊んでいた本年2月、わが国の最高裁長官竹崎博允氏が急遽辞任し、その余韻もさめやらぬまま安倍内閣は後任に寺田逸郎氏を選任した。

 一般に最高裁判事の任命は内閣の専権で、その不透明さや政治性は常に批判されるところである。唯憲法はこれを織り込み済みであり、このシステム自体法的には問題ない。カナダはどうかと調べている矢先、321日にハーパーがM・ナドンを昨年10月に任命したのを、カナダ最高裁自らが違法と判断したのだ。我が国とこの点に関して同じようなシステムをとるも、カナダは議会の公開の聴聞会を置くなどして、内閣に任命にアカウンタビリティを持たせる改革をおこなっており、私は好意的に観察している。ナドンもこれを経て任じられた。なぜ違法なのか。

 カナダ最高裁は、憲法に設置の根拠がなく1867年憲法101条を受けて議会制定法(最高裁判所法(SCA))で設けられる。同法では最高裁の9人の判事のうち3人はケベックの法曹でなければならないとしている(6)。ナドンは過去にそうであったが、任命時は連邦控訴裁判所判事であった。最高裁は政府からこれが適法かの照会を受けて、6条は現職に限定していると解釈したのである。ハーパーは尚もたたみかける。そうだとしたら議会が立法で、ナドンのような者もケベック枠を満たすとできるかとの照会に、NOとした。1982年憲法は、SCAは憲法に含めていないけれども、最高裁判事の構成は同憲法の定める憲法改正手続によらなければならず、すなわち議会のみで変えられず、全州の同意が必要だとしたのである。カナダ憲法の改正手続も日米に比べればはるかに複雑である。

 最高裁判事の任命は政府の専権であり、これを裁判所がひっくり返すのは世界的にもお目にかかったことがない。今回の判断は3人のケベック枠は憲法的価値を持つものであることを明確にした。それはカナダ特有の連邦制を反映しており、最高裁の構成については、ミーチ湖をはじめとする憲法改正案でも3人枠の明文化が終始唱えられる。最高裁は名実ともにカナダ立憲主義の要となり、したがってその判事の連邦制の枠組みでのバランスも憲法的関心となるのだ。(首都大学東京法科大学院)(関東地区ニューズレターNo.11, Sept. 2014より転載)

関連記事

フォトギャラリー

ロイヤルオンタリオ博物館

ロイヤルオンタリオ博物館

ピックアップ

2017.2.27

関東地区研究会(2017/03/18於中央大学市ヶ谷キャンパス)

関東地区では、2人の報告者を招いて以下の通り研究会を開催します。他地区の会員や非会員の方も歓迎します。お誘い合わせの上、ご参集ください…

ページ上部へ戻る