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訳書紹介:シルヴィア・ヴァン・カーク著(木村和男・田中俊弘訳)『優しい絆―北米毛皮交易社会の女性史1670-1870年』(関東地区ニューズレターNo.11)

訳書紹介:シルヴィア・ヴァン・カーク著(木村和男・田中俊弘訳)『優しい絆―北米毛皮交易社会の女性史1670-1870年』(麗澤大学出版会、2014年、4000円+税) 

田中 俊弘

 山川出版社の世界各国史シリーズ『カナダ史』(1999年)の編者で、連邦結成、帝国連邦運動、毛皮交易史などに関する多くの著作を遺した木村和男先生は、2007年5月に逝去する前、シルヴィア・ヴァン・カークの研究書(Many Tender Ties)の下訳を終えていました。某出版会から刊行の話もついていたのですが、亡くなられた後の混沌の内に翻訳権が切れてしまったのです。そこで出版社を変えて、私が下訳と原著を付き合わせながら作業を進めて、ようやく完成にこぎ着けたのが本書『優しい絆』です。

 北米毛皮交易社会の200年間の変化を、女性史の視点から、「結婚」を軸に描き出した社会史の古典であり、読み物としても大変面白い内容です。初期の毛皮交易社会は、白人女性の入植が禁じられていたので、白人毛皮交易者と先住民女性の対等な夫婦関係が見られました。最初はもちろん「インディアン」が結婚対象でしたが、メイティ女性がとって代わるようになります。さらに、白人女性の入植解禁によって、先住民女性が味わった屈辱、その後の人種間の軋轢、そして、過酷な環境への不適応による白人女性の苦しみ。宣教師達の到来によって、教会での儀式を経ない「現地流の結婚」が批判される時代…。少しずつ、しかし着実に社会が変化していく様子が巧みに描かれています。

 2007年には、カナダ歴史学会(Canadian Historical Association)で著者ヴァン・カークの功績を扱うラウンドテーブル会議が開催されました。さらに2012年には、ヴァン・カークの功績とその系譜の研究に焦点をあてた学術書まで刊行されています(Finding a Way to the Heart: Feminist Writings on Aboriginal and Women’s History in Canada, Robin Jarvis Brownlie and Valerie J. Korinek eds., University of Manitoba Press, 2012)。そのような「再評価」以前に刊行企画を進めていた木村先生の思いが、遅ればせながらようやく形になりました。是非とも多くの皆さんに楽しんでお読みいただければと思います。(麗澤大学)(関東地区ニューズレターNo.11, Sept. 2014より転載)

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