ケベック文学

文学が「ナショナル」なものとして語られるとき、言語だけでなく、記憶も共有される必要がある。ケベック人にとっては、カトリック色の強い「生き残りの哲学」と、それによる抑圧が共通の記憶であろう。前者は『白き処女地』に典型的に見られ、後者は、A.エベール、J.ゴドブー、H.アカンら多くの作家によって扱われてきた。中でも、G.ロワの『束の間の幸福』(1945)は新たな現実と対峙する困難を表現した数少ないレアリスム小説として高く評価されている。現在は、移民の出自が多様化してきた状況を反映して、D.ラフェリエールやA.シマザキら非白人作家も活躍している。彼らも含めて「ケベック文学」として語ることの意味が問い直されている。

(小畑精和)

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