モザイク社会

歴史的にみて、カナダは世界でも有数の移民受け入れ国である。その受け入れた移民がカナダ社会においてどのようになることが期待されているか、カナダの移民受け入れの理念は何かは、時代によって異なる。19世紀には、フランス系カナダを除いて、エスニック集団はイギリス系多数派集団に同化することが理想と考えられた。しかし、その理想は、多様な人口が混じり合って新たなエスニック集団が作られるという「人種のるつぼ」論に取って変わられた。さらにその考えに代わって社会に受け入れられたのが、「モザイク」という理想である。この考え方では、多様なエスニック集団がそれぞれのエスニック集団の文化的特性や特徴を保持しながら、まとまってカナダ社会を形成することになる。この「モザイク」が垂直になっているとして、社会階層や権力の概念と結びつけて論じたのが、John Porter, The Vertical Mosaic(1965)である。「モザイク」の概念は1970年代のマルチ・カルチュラリズムの先駆である。

(飯野正子)

関連記事

ページ上部へ戻る